インタビュー
イーストリーCOCはどうやって生まれたのか?
どういう背景があるのだろうか?
開発者である
内廣健 氏(現:京都紙商事株式会社 顧問)に
昔の紙屋ばなしからイーストリーCOCの
開発に至るまで
じっくりとお話をお伺いしました。
記者:しゃちょーさん
昔の京都の紙屋さん
初めまして。
今日は内廣さんのお話を色々とお伺いしたくて、
大阪からやってきました。
内廣さんは85歳とのことですが、
いつ頃から紙屋さんでお勤めされているのですか?
昭和32年に紙屋に入社しましたので、62年間 紙屋です(笑)。
当時の紙屋は自転車で配達していましたね。
紙目に沿って巻いて、自転車の荷台にくくりつけてね(笑)。
自転車ですか!?
京都市内を自転車に紙を乗せて配達!
それはものすごく大変だったでしょうね!
私は身長が低いので、
自転車に股がるとつま先立ちになるんです。
だから重い紙を自転車に乗せて止まるとフラフラで(笑)。
大八車(ダイハチグルマ)で配達もしていましたね。
京都はね、南から北にかけてずーっと登ってるんですよ。
だから北へ配達は大変でした。
帰りは楽なんですけどねー(笑)。
大八車:手押し車 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%85%AB%E8%BB%8A
今では考えられないですね!
当時は車で配達することは無かったのでしょうか?
ミゼットで配達している企業などもありましたが、
紙屋が車で納品を始めたのはずっとあとのことですね。
当時、紙屋の私どもの作業着は
印半纏(シルシバンテン)でした。
自転車で配達していた頃は、
雨が降ってくると印半纏を脱いで自転車の荷台の紙を覆い、
濡らさないようにしていましたね。
濡らすようなことがあれば、
先輩たちからものすごく怒られました(笑)。
ダイハツ ミゼット:三輪のトラック https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%8F%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%88
印半纏:屋号などを染め抜いた法被 https://kotobank.jp/word/%E5%8D%B0%E5%8D%8A%E7%BA%8F-535993
昔の先輩って(指導が)厳しかったでしょうね?
紙を傷つけようなものなら「紙は金だぞ!!」と怒られました。
だから紙の取り扱いには非常に気を掛けましたね。
内廣さんは当時どういう営業をされていたのですか?
当時の社長、私は師匠と仰いでおりますが、師匠から
◾️お客様はどういう紙を欲しておられるのか
◾️作っておられるものをじっくりと観察し、どういう提案ができるか
そういった営業ができる感性を培え、という教育を受けました。
さらに、
◾️頭とご縁を使えば設備がなくてもモノを生み出すことができる
ということも教えてくださいました。
それは私たちが知る紙屋さんと全く違いますね。
私たち自身、お客様からご注文を請けた紙を如何に迅速に届け、
代理店と価格交渉を行い、流通コストを下げて、
自分たちの利益を生み出すという流通業者としての
固定観念があります。
師匠は一般の紙屋さんとは違った考えを持っていたと思います。
誰でも 何時でも 何処でも 買える紙 を売っていてはダメだ、
と話されていました。
提案できる紙を生み出すにはどの工場で作れるだろうか、
ということを考えていました。
このごろようやく紙屋さんが流通業者としてだけではなく、何かの
価値を生み出すことを始めなければ、と考えるようになりました。
そうですね。
これからの紙屋さんは、その課題に取り組む必要があると思いますね。
イーストリーCOCについて
イーストリーCOCについてお話を聞かせてください。
2013年11月19日の日経産業新聞に
「万年筆 こころくすぶる共演~デジタル化の逆風下で~」という記事がありました。
この記事の中で万年筆メーカーのセーラー万年筆さんやパイロットさんが、万年筆の良さを小学生4年生よりも小さな子供達に向けて広めていくんだ、と述べられていました。
すごい!!日経産業新聞の記事が発端ですか!?
「子供達に向けて」ということは内廣さんには何かしらの想いがあるのですか?
もし子供達が初めて万年筆を使ってみた時、字が滲んでし
まったり、インクが擦れて手を汚してしまったりしたら、
どんなに使いやすい万年筆でも嫌な思いをすると思うんですね。
普通の紙だとそういう事が起こり得るので
◾️インクのにじみがない
◾️吸収が良い
◾️裏抜けしない
(表裏、両面とも使える)
◾️書き心地が良い
◾️風合いがある
そんな紙が必要じゃないか、と感じたんです。
そのことを王子エフテックスの技術者とお話したところ、
「お!それはそうだ!」と、ご協力をいただく事ができました。
なかなか僕たち一般の紙屋は紙メーカーさんとの繋がりが
ありませんので、とても貴重な関係ですねー。
そうなんです。
師匠が築いてこられた製紙メーカーさんとのお付き合いが私にとっては幸せな事です。
師匠は製紙メーカーさんと品質の話はしても、価格の話は一切しませんでした。
業界のルールは絶対に守る立派な方でしたね。
「イーストリー」はどういう意味で命名されたんですか?
これはね、復活を祝う「イースターデー」と有益なものを生み出す「イースト菌」を組み合わせた造語なんですよ(笑)。
それと、私のこれまでの経験で「ry:リー」と語尾につけたものがよく売れたんですよ(笑)。
それで「いいストリー:良い物語」みたいなことも含めて「イーストリー」と名付けました。
ヘエーーーーー!
ワクワク感やドキドキ感を創出したくて、
それに結びつくような紙にしたかったんです。
私はね、「夢」は「見るもの」ではなくて「叶えるもの」だ
と思っているんです。「夢を叶える」にはワクワク感とドキドキ感が必要だと思うんですよねー。
「夢は見るものではなく、叶えるもの」
そのお言葉!
いただきましたぁっー!!
笑 笑 笑
イーストリーCOCは
内廣さんのこれまでの長い紙屋経験と知識、
師匠から引き継いだ真摯な商道と
製紙メーカーとの信頼関係、
そして何よりも
内廣さん自身の温かなお人柄
によって生まれた紙である事がわかりました。
こうして、開発者ご自身の考えや想いを
聞かせていただくと
この「イーストリーCOC」を
沢山の人に知っていただき、使っていただきたい
という思いを持ちました。
「イーストーCOC」が
ワクワクとドキドキを生み出して
誰かの夢を叶えるきっかけになれば
とても嬉しいです。