2019年8月、サンフランシスコにお店を構える「KELLY PAPER」という紙屋さんを訪問しました。
アメリカでの紙屋さんはどんな販売方法をしているのか、そして日本の紙屋さんとどんなところが違うのかなどなど、興味津々。
今回の訪問で気付いたことなどをまとめてみました。
アメリカの紙の流通には様々なチャンネルがありますが、KELLY PAPERは使用寸法カットされた印刷用紙およびデジタルプリント用紙を販売する専門小売業を営んでいます。ユーザーにいちばん近い位置で紙販売を行なっており、個人やオフィスニーズをターゲットにしています。アメリカ西海岸で40店舗を展開しています。
1936年ロサンゼルスにて創業。2年後の1938年にはロングビーチに支店を設立。当初は印刷会社への卸売を主力にしていたようだワン!
お店の入り口前に積まれたパレットに思わず興奮。触って確認。
日本の紙の規格サイズとは異なるので、もちろんパレットの大きさも異なります。
日本ではA4サイズが主流ですが、アメリカではレターサイズという寸法が主流だワン!
Letter Size : 8.5インチ×11インチ ( 約216mm×279mm )
いよいよ店内へと向かいます。
「広い!!」店内は体育館くらいの大きさです。これだけの敷地をサンフランシスコのシティー内で維持するにはどれくらいの売り上げをしなければいけないんだろう。。。と、ついつい経営目線で見てしまいました。
販売されている紙種も多そうです。紙の現物を見て紙を購入したい場合、Kelly Paperはかなり使えるお店ではないかと思います。
また、プリント出力・断裁加工などもお店で請け負っています。
紙は種類・分類ごとに棚分けされています。案内看板は使用目的が表示されているので、欲しい紙が探し易いです。
小口販売用の紙は枚単位、束単位で購入できます。もちろん、もっと使う場合はケース単位でも購入できます。
左側の棚、10Aは以下の紙が置かれているのがすぐ分かるワン!
COLOR OFFSET:オフセット印刷向けのカラーペーパー
SPRINGHILL:製紙メーカーInternational Paperが製造している色上質のブランド名
TEXT:規格サイズText系のサイズ
60#&70#:連量が60ポンドと70ポンド
日本とアメリカの紙を見比べると、重さで紙の厚みを区別するとこや、全判サイズからの丁取りなど、基本的な捉え方は同じです。
規格サイズや寸法単位(インチ)、連量表示(ポンド)などの点が異なるところですが、紙の知識があれば理解し易いです。
販売されていた紙の商品ラベルに注目してましょう。
COUGAR DIGITALという紙です。Domtarという製紙メーカーの紙です。
◾️「For use in Offset, Laser and Inkjet Applications」と記載されています。つまり、オフセット印刷、レーザープリンター、インクジェットプリンター対応ということです。
◾️「18 x 12」はサイズ(インチ)です。すぐ下にはcm表記してくれているので分かりやすいですね。
◾️そして、その横に「83.08M」と表記されています。これは「M Weight」という単位で1000枚の重量(ポンド)です。
◾️「Grain Short」は紙目です。「Short」はヨコ目、「Long」はタテ目です。この紙は「Short」なのでヨコ目、30.5cmに平行に紙目が通っていることがわかります。
◾️「400sheets」400枚入り。
◾️「Smooth」は紙の表面の仕上げ状態を表示しています。「Coated」の表示はありませんので、この紙はノーコートで表面はスムース、つまり上質肌であることがわかります。
◾️「Cover」は基準サイズが「Cover:580×660mm」であることを示しています。
◾️「100 lb.」は連量が「100ポンド」。
◾️坪量が「270g/㎡」と記載されています。ハガキ(209.5g/㎡)よりも厚い紙であることがわかります。このあたりの感覚は紙を普段から携わっていないとわかりにくいかもしれませんね。
◾️White 白色
これらの情報でこの紙がどんな紙か大体わかりますね。
こちらもラベルを読み解いていきましょう。
先ほどのサイズ表記は「18 x 12」となっていましたが、同じサイズで「12 x 18」と表記されています。これは「Grain Long(タテ目)」だからですね。日本も例えばキク判タテ目は「636×939」、キク判ヨコ目は「939×636」と表示しますので同じですね。基準サイズは「Text:635×965」で連量は「80ポンド」、「32」はBondサイズで換算した連量のようです(COUGAR DIGITALカタログより https://www.domtar.com/sites/default/files/2018-02/Cougar-Digital-SS-EN.pdf)。坪量は118g/㎡なので日本の上質の<90>と<110>の間くらいですね。小冊子やチケットなどに良い厚みです。
馴染深いワンプ包装形態の全判も販売されていました。「グロスコート Cover 81# 19×25インチ タテ目」、逆算すると220g/㎡なので表紙やカードで使用するくらいの紙厚です。
紙の知識があれば、紙のラベルを見て色々読み解くことができるのですが、なかなか一般の人には難しい部分もあるかもしれません。
でも、スタッフのオジサン達に「こんな用途の紙を探している」と申し出れば色々と相談に乗ってくれると思います。紙について連量とかサイズとか知らなくても、こんなものを作りたくて、こんな印刷をする予定だ、など具体的な事を質問すれば適切に応えてくれると思いますよ。
Kelly Paperには日本ではあまり見かけない半製品などもありました。こういった半製品があれば、比較的簡単に印刷物が作れますね。
日本ではあまり見かけない半製品などもありました。これはチケット印刷用台紙です。もぎり用ミシン、No.1~No.2000までのナンバリングが既に入っています。プリントして断裁すれば出来上がり!
あのホテルのドアにぶら下げる「Please don’t disturb」とかのドアノブサイン用でしょうか?もしかしたら違う使い方もあるのでしょうか?よくわかりませんがこんな半製品初めて見ました。
インクや洗浄液、製本用ボンドなどのプロツールも販売されています。小規模の印刷会社が買いに来られているのでしょうね。
16Aは「WILL CALL」棚、つまりオーダーで受けた商品のようです。棚には近隣の印刷会社さん、デザイン会社、ホテル、お店、個人の名札が貼られた紙やインクが棚に積まれていました。
もしかしたら、これこそKelly Paperの真骨頂なのかもしれません。地域の紙のニーズに対して供給する拠点として存在するKelly Paperの価値がそこに現れていたような気がします。
現在、日本において小口ニーズに特化して窓口を設けていた紙屋さんは衰退の一途を辿っています。やっていることは一緒なのになぜ違うのか?
Kelly Paperの全体を見たわけではありませんが、実際にその店舗を見て、体験したからこそ感じる事ができたモヤっとしたものがありました。
このあたりの事は2019年9月28日開催の第2回 紙話紙話でお話しいたしますね。
第2回紙話紙和 参加チケット(まもなく販売開始致します。)
こちらはKelly Paperの社内用メモパッド。タイトルが「Will Call」になっています。オーダーが入った商品にはこのメモが貼り付けられていて、Will Call棚に置かれていました。
Kelly PaperとSpicers Paperは両方とも同じグループ会社に所属してるワン!
親会社はCentral National Gottesman Inc.という会社。